静かな午前の光を切り裂くように、その「影」は突然我が家の玄関先に現れました。
全国各地で被害を広げ、巧妙に張り巡らされた悪質な罠——「訪問買取詐欺」。
これまでニュースの向こう側の出来事だと思っていた危険が、ついにここ、静岡市清水区の我が家にも牙を剥いたのです。
これは、一歩間違えれば大切な家族が毒牙にかかっていたかもしれない、あの緊迫の数分間の記録です。・・・
第1章:平穏を破る訪問者
ことの始まりは、どこにでもある平凡な午前中のことでした。
インターホンが鳴り、70代の父が玄関口へと向かいます。そこに立っていたのは、一見するとどこにでもいそうな、ごく普通の20代くらいの青年でした。
しかし、その爽やかな外見とは裏腹に、口から突いて出たのは甘い甘い蜜の言葉。
「今度、お近くのスーパーにリサイクルショップがオープンするんです。もしご不要なものがあれば、相場よりずっと高値で買い取りますよ。……例えば、金や宝石、お眠りのブランドバッグなどはございませんか?」
その言葉に悪気なく耳を傾けた父が、居間にいる私に声をかけてきました。
「なあ、今買取屋さんが来てるんだけど、何か売りたいものってあったか?」
その瞬間、私の脳裏に激しい警報が鳴り響きました。
——訪問買取。間違いない、これは詐欺の典型的な手口だ!
第2章:玄関口の静かなる決闘
私は内心の動揺を一切顔に出さず、何も知らないフリをして静かに玄関へと足を進めました。
「あの、すみません。もう一度ご用件を伺ってもいいですか?」
私の問いかけに、青年は父に言った内容を繰り返しながら、1枚のチラシを手渡してきました。
一目見ただけで異様な違和感を放つ、安っぽく、どこか古めかしいチラシ。
私はあえて親切な住民を装い、穏やかなトーンで仕掛けました。
「暑い中、わざわざ我が家までご苦労様です。ちなみに、その新しいスーパーってどちらですか? オープンはいつ頃でしょうか?」
一瞬の沈黙。青年の目が泳ぎ始めます。
「ええと……あ! ええと、スーパー〇〇で……はい! 9月オープンです……!」
しどろもどろになる回答。確信を得た私は、手に持ったチラシの細部に視線を走らせました。そこに刻まれた文字を見逃すはずもありません。
「このチラシ……住所が『東京都荒川区』って書かれてますけど、わざわざ東京から来られたんですか?」
「あっ! いや、その、ええっと……ハイ! いや、僕はただのバイトでして……」
ボロが出始めました。ここから一気に追い詰めます。
「買取の業者さんとのことですが、当然『古物商の許可』はお持ちですよね?」
「えっ! あ、はい! もちろん許可は得ています!」
「それなら、古物商許可証を見せていただけますか?」
瞬間、空間が凍りつきました。青年は顔を引きつらせ、不自然な汗を浮かべます。
「えっ! あ……ええっと、んんん……実は、今日はうっかり忘れてきてしまいまして……あは、あはははは……」
渇いた笑い声が玄関に空虚に響きます。私は冷ややかな視線を崩さず、トドメの言葉を突きつけました。
「そうですか。実はね、最近この近所でも買取詐欺の噂をよく耳にするので、どうなのかなと思いまして」
「えっと! いやっ、全然そんな詐欺とかじゃなくて! ええと、あの……」
「私、こういう怪しい業者さんが来るたびに、いつも警察に通報するようにしてるんですよ」
「えっ!!」
青年の顔から、完全に血の気が引いたのが分かりました。
「い、いや! 待ってください! そんなんじゃないですよ! 全然フツーの買取ですから! あはっ、あはははは……!」
第3章:逃走、そして明かされる正体
動揺を隠しきれなくなった男は、もはや取り繕うことすら諦めたように後ずさりし始めました。
「えっと、あの! あっ! ご、ごめんなさい! こっ、この後、他のお宅からも買取の依頼が入ってましてっ! また何かありましたら連絡してください! あの、あのっ! また来ますから……! あはははは(汗)」
「そうですか。もう来なくて大丈夫ですよ(笑)」
私がクスッと笑うと、男は弾かれたように背を向け、蜘蛛の子を散らすような勢いで逃げていきました。
……
静けさを取り戻した玄関で、残されたチラシを改めて確認しました。
そこにあった店名は「リサイクルショップ カインズ」(電話番号:0120-085-104)。
すぐさまネットで検索をかけると、画面を埋め尽くす大量の注意喚起情報。長野、富山、三重……全国各地を転々とし、2021年頃から暗躍し続けている有名な訪問買取の手口だったのです。
結び:平穏を守るために
まさに危機一髪。間一髪のセーフでした。
今回はたまたま私が自宅におり、違和感に気づいて毅然と対応できたため難を逃れました。しかし、もし父が一人で対応していたら……と思うと、今でも背筋が凍る思いがします。高価な貴金属や思い出の品が、言葉巧みに奪い去られていたかもしれません。
高齢者を狙う悪質な業者は、あなたのすぐ身近にも潜んでいます。
見知らぬ訪問者、甘い言葉、そして不審なチラシ。
どうか皆様も他人事と思わず、「訪問買取」には十分にご注意ください。
もし、ご不安をお感じでしたら、遠慮なく私に相談してください。
詐欺対策のことなら、私、コンキノにお任せください。